今回は,「企業の強さ」をテーマに,バフェット氏の着眼する 「Exceptional underlying economics」(根源的な経済性)の観点から,考えてみたいと思います。
バフェット氏は,自身が投資対象とする企業の特徴として「Companies with exceptional underlying economics」(根源的な経済性を備えている企業)と表現します。「企業の強さ」を評価する場合には,例えば,技術力や販売力,経営者の資質や事業戦略の巧拙などの多様な要素があるのでしょうが,その中でもバフェット氏は企業のもつ「根源的な経済性」に着目します。
では「根源的な経済性」とは一体どういうものなのでしょうか?ここでは,コンビニ業界を例にとり,私達の仮説としての,コンビニ各社の根源的な経済性の違いについて考えてみたいと思います。
私達は,24時間営業により同じような商品やサービスを提供しているコンビニ各社においても明らかに根源的な経済性の違いが存在し,その中でもセブンイレブンは突出した根源的経済性を備えていると考えています。
下表はコンビニ各社の「客単価」と「客数」ですが,セブンイレブンの「客単価」と「客数」は共に群を抜いています。しかもそのような現象は一時的なものではなく,過去から長期に渡り持続的に生じています。そのような持続的な差異は一体何によってもたらされているのでしょうか?
ここで,コンビニ各社の出店の歴史等について簡単に見てみたいと思います。
上表をもとに,私達はコンビニ各社間に明確に存在する「客単価」と「客数」の差異に関して次のような仮説で説明できると考えています。
【仮説】
セブンイレブンは歴史的に他社に先駆けてフランチャイジー(コンビニ経営のオーナー店主)を囲い込み,良好な立地に集中的に出店してきた一方で,同業他社は出店に出遅れた分,好立地を求め日本全土を隈なく探し,地理的に分散したフランチャイジーの確保を余儀なくされた。
小売ビジネスの本質が「いかに効率的なロジスティックを確立するか」にあるとの仮説に立つと,セブンイレブンが長い歴史の中で既に獲得したこの「良好な立地への集中出店」という物理的事実からなる「根源性」こそが,客単価や客数面での小売業としての高い「経済性」をもたらしていると考えることができます。端からみていると一見大差のない同種のビジネスを展開しているように見えるコンビニ各社ですが,実はそこには,歴史的積み重ねによる容易には変え難い「根源的経済性」の違いが存在していると考えられます。
そのような中,セブンイレブンに大きく水をあけられた同業他社は,新業態コンビニの出店や,アイデアを凝らした新商品の開発,優秀な経営者の送り込みに躍起です。しかしながら,これらの,いわゆる事業戦略レベルの取り組みは確かに短期的な業績動向には影響を与えるかもしれませんが,土台として存在するビジネスの根源的な領域までをも変えることは難しいでしょう。
このことは,「船に乗った後にどれだけ効率的に船を漕げるかよりも,どの船に乗り込むかが決定的に重要」とのバフェット氏による表現が雄弁に物語っていると思います。
「企業の強さ」を測る要素は多数あってしかるべきであると思いますが,その中でも私達は,長期的な業績動向を規定する「根源的な経済性」に注目して,企業分析を行っていきたいと考えています。
以上